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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2010 靜 哲人さん 発音矯正

●講演: 「英語教師としての心・技・体を鍛える」

靜(しずか) 哲人(てつひと)さん(埼玉大学教育学部英語教育講座教授)

 発音矯正を自信を持って行うのは、プロ意識と厳しいトレーニングなしにはできません。英語教員に発音に関してダメ出しをするわけですから、靜先生は真剣勝負。居合い抜きのように、バッサバッサと参加者を切り倒していかれました…。それは、私たち教員が自分の教室で自信を持って発音矯正できるようになるためには、教員自身の発音トレーニングの必要性があることを痛感させるためだったのだと思います。根底に流れる「真摯さ」があればこその靜先生のダメ出しを参加者がどう受け止め、今後どう活かすかが問われる講演でした。ご講演ありがとうございました。

(1)靜先生
・ 講演者から:一斉授業にせよペアワーク授業にせよ、生徒を厳しく鍛えて効果を上げられるためには、当然ですが大前提として教師に英語力がなければなりません。英語教師として絶対必要な発音力、聞き分け力、スピーキング力をレベルアップするお手伝いをします。
・ 靜先生のHP:http://sites.google.com/site/zukeshomepage/home
・ 著書:『英語授業の大技・小技』研究社 (1999)、『英語授業の心・技・体』 研究社 (2009) 、『絶対発音力: 「マトリックス法」で脱日本人英語』 ジャパンタイムズ社 (2009.)

(2)ワークショップ(その1)
・ 靜先生から「先生に英語力(パラフレイズする力)がないから生徒に強く出られない。」「40人のエッセーを書かせて、さばく自信がないので、定型の英作文になってしまう」とのコメントがありました。
・ 「靜流英語授業道 心・技・体 十六戒」を英訳する:HPに掲載(http://sites.google.com/site/zukeshomepage/home)されていますが、ワークショップでは英訳するのが課題でした。参加者は懸命に取り組みました。Visual(ヴィジュアル)とindividual(インディヴィデュアル)の「ジュ」と「デュ」の区別、My knees are special.(マイ ニーズ アー スペシャル)とMy needs are special. (マイ ニーヅ アー スペシャル)の「ズ」と「ヅ」の発音仕分けの指導がありました。そのあと、少しだけカーペンターズのTop of the Worldでの発音指導を受けました。

・ 1) 「心」
一.  生徒に好かれようなどと思うな。英語教師の仕事は生徒に好きになってもらうことではない。英語の力をつけてやることである。そのために「嫌がられる」ことをしてやるのも仕事である。
二.  ことさら英語を好きにしようなどと思うな。好きだの嫌いだの言っているのがそもそも甘い。英語は道具として必要だからやるのであって、それ以上でも以下でもない。近隣アジア諸国を見習え。
三.  歌舞音曲や遊戯やICTに頼ってことさら楽しい授業をしようなどと思うな。生徒に対する迎合は何も生まない。本当の楽しさは、苦しさを乗り越えてできなかったことができるようになった達成感から生まれる。
四. 「生きる力」だの「心を育てる」だの口にするのは、やることをやってからにせよ。英語は技能であって道徳ではない。「読み書きそろばん」としてのスキルがしっかり身につかなければ、他の何が育っても英語授業としては意味がない。
五.  授業では生徒にプレッシャーとストレスを与えることをいつも考えよ。授業はリラックスの場所ではなく、訓練の場である。常に生徒をいかに忙しくするかに頭を絞れ。
六. 自分の生徒を躊躇なく呼び捨てにできるような距離感を早く築け。呼び捨てにされた相手が違和感を覚えないような存在であれ。年下の相手をいつまでも「さん・君」でしか呼べないのは、教師としての自信と愛情がないからである。
七. 「通じる」ことは必要条件であって十分条件ではない。意味が通じる英語をさらに良いものにブラッシュアップしてやれる場所は教室しかない。「通じればよい」という世間の基準に合わせていては、コーチングの専門家たる教師の存在価値がない。
八.  生徒のパフォーマンスは常に評価してそれを伝えよ。どんな場合にも足らない点を見つけてダメを出せ。ダメ出しとはすなわち向上のためのヒントでありアドバイスである。評価のない発表は時間の無駄遣いと心得よ。
九.  題材内容の面白さに頼らず、自分でデザインする活動内容で生徒を惹きつけよ。題材は面白いに越したことはないが、たとえ無味乾燥な題材であっても魅力的な授業はいくらでもできる。自分の授業のつまらなさを教科書や教材のせいにするな。
十.  いつ誰に「授業を見せて欲しい」と言われても断るな。(若林俊輔先生曰く、「他人には見せられない授業を毎日生徒には見せているのか?!」) 「授業を見せてください」と頼んで断るような先輩教師は見限ってよし。

2) 「技」
十一.  一斉授業の局面は必要最小限に抑え、ペア、グループ、グルグル局面を増やせ。プリントで配れば済むことを授業で解説して時間を浪費するな。授業では対面でしかできないことをやれ。授業時間の八割はひとりひとりの生徒が何かを英語で言っている状況を作り出せ。
十二.  生徒に音読させる時は、耳を澄まして音を聞き、目をこらして唇の動きを見よ。自分では気づかないダメな点、足らない点を発見してやり、もっと上手くなるためのアドバイスをしてやるために音読はさせるのだ。
十三.  発音や文法など、英語の形式面で改善すべき点は日本語できちんと指摘してやれ。内容本意のやりとりを続ける中でさりげなく正しい形を聞かせるようなESL式では、EFLの日本で生徒に伝わるまで100年はかかる。
十四. 自分が英語で授業をすることにこだわるのでなく、生徒たちにいかに英語を使わせるかに心をくだけ。授業でもテストでも応答・解答として日本語を言わせるな、書かせるな。英語を言わせよ、書かせよ。英語は話せてナンボ、書けてナンボである。

3) 「体」
十五.  教室では、いつでも生徒の範となるにふさわしい、きちんとした発音で英語を話せ。英語教師の口から出てくる英語は一言一句がすべて商品である。母語話者と「どことなく」違うのを超えて個々の音が「間違っている」のは商品として許されない。
十六.  教材の英文およびその関連事項について、生徒に分かる範囲の英語で自由自在に解説し、言い換え、要約し、具体例を出し、質問ができるだけの英語運用力を持て。一般的なプロのユーザーに必要な英語力と、プロの英語教師として備えるべき英語力は、質が異なる。


(3)ワークショップ(その2)
1)1人で発音矯正:GZGZGZGZ…「ジーズィー、ジーズィー…」、 BVBVBVBV…「ビーヴィー、ビーヴィー…」など、区別する必要のある2つの音を早口で言う。(Vはじわっと伸ばして発音すると良い)
2) ペアになって発音矯正
a) 2人で羽織のように1人が後ろに立つ=発音している口が見えないようにする:
・ 前にいる人が「BB / BV / VB / VV」のどれか1つを発音し、後の人が「BB」は1,「 BV」は2,「VB」は3,「VV」は4,と決めて、1~4の番号で言い当てる。
b) 向かい合うやり方で:
・ 不定冠詞をつけてアルファベットを言う:an A, a B, a C, a D, an E….を「アン ネイ、ア ビー、ア スィー、ア ディー、アン ニー…」のように言う。
(A is the first letter of the alphabet. なので「アルファベット」とは26文字を指す)
・ 中学生向き:My name Shizuka starts with an S. Shizuka starts with an S.という見本を示し、自分の名前のイニシャルを織り交ぜて言う。
・ 高校生向き:I have a name that starts with an S. Shizuka starts with an S.
・ Book is a word that starts with a B. Book starts with a B
・ One and nine is ten. One and nine is ten. One and nine, one and nine. One and nine is ten.
・ One and one is two.(2回繰り返し)、One and two is three.(2回繰り返し)。
・ Nine and seven is sixteen.など。
・ I’m thirteen years old. I’m thirteen years old. Thirteen years , thirteen years. I’m thirteen years old.

(4)質疑応答
・ Q: 『Progress in English』は米語と英語が混じっている。どの程度、生徒に伝えたらいいのか。
 A: あまり英米は違いがない。子音は100%共通、違いは母音。個人差も大きい。
・ Q:自分の耳が信じられないので「疑わしきは罰せず」にしてしまう。
 A:ダメです! (発音矯正を)やってみましょう。
・ Q:靜先生の「English アイウエオ」を使っています。生徒は良くやっているが、評価の仕方に困っている。ALTに対面式でテストしている。発音矯正すると声が小さくなってしまう。
 A:ALTはさせる方向ではない。「ぐるぐる」をやると良い。


●以下にある「参加者の感想」を5月例会の直後に送付したときの静さんからの返信:感想、ありがとうございました。私からもあの時の参加者に言い忘れたことがありますので、何らかの形でお伝えください。
「自分は生徒の発音の是非を聞き分ける自信がない。自信がないので、疑わしきは罰せず、で、やっている」とおっしゃった方がいましたね。この「罰せず」という表現が、心構えが根本的に間違っていることを示しています。ダメ出しは罰ではありません。向上のためのヒントです。疑わしき、ということは何のためらいもなくマルをだすレベルには達していない、ということです。そのような「疑わしい」レベルの生徒に、「あなたはそれでいいよ」と言ってしまっては、その生徒の成長はそこでストップします。疑わしいのだから、まだ向上する余地があるよ、という必要があります。

●参加者の感想
・静先生のセミナーは今日で3回目ですが、ドキドキしながら今日も満喫しました。前回もrとlを注意され、まったく進歩していないことを痛感しました。単調になりがちな文法の授業とかも例文を正確な発音をさせて鍛えて、リズミカルな授業になりえるのではないかとふと思いました…。
・自分の甘さにがっくりきました。目の覚める授業をありがとうございました。夢中で学ぶ楽しさを久しぶりに感じることができました。
・うわさ通りとても厳しかった…、けれども、すごく為になりました。「生徒が楽で好きな授業」=「教師も楽している授業」なのかなと思いました。生徒の為にももっと勉強して厳しいけれど面白い授業ができるようになりたいです。本も読んでみようと思います。
・[ ヂ]と[ ジ]の発音の違いは長年の課題でした。今日は目からうろこが落ちたようです。フランス語も教えているので、今までいかに自分がいい加減な教師だったか大いに反省しました。仏に留学していた頃発音の講義で私がje[ジュ]を何度も直されたのは[ ヂュ]だったからなんだと30年経った今気づきました!
・まずは生徒に厳しくプレッシャーを与えられるだけの英語力を自らがつけること。当然のことですが、それを再認識させられました。
・私は幼少の時分より色々な国を転々としてきました。色々な国の英語を環境に合せて使いわけてきました。発音などは感覚で使いわけてきた部分が多かったので、今回は理屈を学べてよかったです。きちんと勉強し直さなくてはと思いました。
・私自身のよく間違える発音でしたので、とてもよかったです。家で猛特訓をします。
・発音指導はすっかり怠けているので自己研鑽してがんばりたいと思います。間違った発音もできなければいけないというのは納得でした。実際、ペーパーはできるのに平坦な発音しかできない生徒も多いので、イントネーションも含めて英語をきっちり発音できるようになれば自信もつけさせられると感じました。
・訓練あるのみと自覚を新たにしました。
・英語教師の力をbrush upする努力の必要性。生徒に対する厳しさ、つまり、自分に対しても厳しく! 勝負する場所は教室! 生徒の口を見てのリスニングの指導の仕方が理解できました。ありがとうございます!
・教師として自信・確信をもって授業することが大切だとあらためて感じました。発音については勉強になりました。また、教員が用意する教材で生徒の活動が決まることも参考になりました。
・発音の練習の具体的なやり方、実践。リズムに乗って口ずさみながら連結音の練習をさせる方法などはとてもためになりました。また、一つひとつの発音をしっかりとcheckしてくださる先生の技量に感服いたしました。英語教師としての「体」をしっかり学ぼうと思います。本日はお忙しい中、ご講演いただき、ありがとうございました。
・正直言って、期待はずれでした。音声面での内容が殆どだということは予想していませんでした。(細かすぎる音声面の指導は少し抵抗があります。)初めに配られた11の意見(?)に対し、解説し、論議していくのかなと思っていましたし、個人的にはそうしていただきたかった。そもそもそういうつもりではなかったのですね。
・音読中に生徒の唇の動きを見るようにします。明日からの授業に使わせて頂きます。
・厳しい指導をしてこそ、生徒との真の信頼関係が作れる気がしました。自分の英語力のなさ、発音のいい加減さが身にしみて分か良く分かりました。まずは生徒の見本として、自分自身の英語力向上を目指し努力していきたいです。
・自分自身が学生時代に発音指導を受けたことが無かったので、自分の授業でも発音指導に時間を割いたことはほとんどありませんでした。教師がきちんとした発音できるようにトレーニングしないといけないと思いました。
・発音の〔?〕と〔?〕の違いはふだん意識していなくて、とても難しかったです。でもとても勉強になりました。もっともっと訓練しなければと思いました。外国に行かなくても鍛えたいです。最初のディスカッションはとっても刺激になりました--!! ふだん簡単な英語しか教えていないのですが、自分は使えるように努力をしなければと反省しました。
・とても緊張感のある講演でした。自分自身もしっかり勉強しようと心を改めさせていただきました。
・一時間半があっと言う間でした。ありがとうございました。
・自分の英語力。発音力の向上が大切だと痛感させられました。
・レジュメを見て「怖いな」と思いましたが、クリアーな発音と自信を持ってdemonstrateされる姿・リズム感ある授業づくりに参考になることがたくさんありました。本日Amazonで本を注文します。ありがとうございました。
・英語教師としてのプロ意識をもっと持たなくてはと感じました。次回は発音だけでなく、先生のリ-デイングの授業の方法についてうかがいたちと思います。
・先生がなさったように発音指導をしっかりやりたいという気持ちは強いのですが、「そんなことやってどうなるの」的な生徒から発せられる磁場に負けてしまっています。もっと自分が「発音の大切さ」と心から説ける教師にならねばと思います。発音指導以外にも教わってみたかったです。
・〔?〕〔?〕は自分で発音できても人に教えるのは難しいですね。「〔v〕の発音は、じわーっと…」など、参考になりました。レジメからhard to please な方かと勝手に推測しておりましたが、全然そうではなかったですね。もっと厳しいことも伺いたかったです。


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